2011/07/03

何故、戦略的に考えないのか?(3)

では 戦略的に考えるというのはどう考えることなのかということです。
「戦略的に考える」とは 長期的に総合的に考えることーこれは辞書によればです。
まず、視点をどこにおいて考えるのか ということが第1の議論です。  

   長期 ・ 短期
   全体 ・ 部分(組織全体 ・ 部門)
   広く ・ 狭く(市場全体 ・ 部分) 
   外部 ・ 内部
   高く ・ 低く

左右の視点でいえば 左側に視点をおいて考えることです。といって右側を無視することではありません。左側の視点に立って右側を見るのです。私たちは目先のこと、今日明日のことを考えがちです。組織のトップにある人が戦略的に考えないといけないというのは 今日・明日の利益ではなく 3年後・5年後のビジョンを考えなければいけないということです。組織の未来は経営者が握っているのです。

ビジネスにおいて重要なことは何について考えるのかという点です。「戦略的に考える」ということは考えるべき要素を分析し分析結果に基いて考えることです。分析しながら考えるのです。ただ、考えればいいというものではありません。結果が求められるのです 戦略的に考え、意思決定し 行動に結びつけることです。

(戦略的に考える 要素)
  1.市場・環境
  2.自社の市場での位置づけ
  3.競合先
  4、自社の経営資源

ビジネスの場合には当然ながら結果を問われます、つまり 成果がアウトプットできなければいけないのです。戦略的に考えるのは 目標は達成したいから、競合先に勝ちたいから、組織として存続したいからです。そこに明確な意図と目的があるから戦略的に考え行動するのです。

経営者が 戦略的に考えない会社は 持続的な成長はありえないのです。成否は経営者の考え方にある、といってもいいでしょう。だから、経営者は「戦略的に考える」ということがどう考えることなのかを知っておかなければいけない、スキルとして習得しておく必要があるのです。「戦略的に考える」スキルです。

何故 戦略的でないのか?(2)

何故、私たち(日本の組織あるいは日本人)は戦略的ではないのか? 多分そうでしょう。思い当たる理由はいくつかあると思います。

一つの理由は 戦略的に考える方法やプロセスを学んでいないことです。学ぶ機会がなければ、・・・・・もちろん自己流で戦略的に考えることもできます。それが戦略的であれば問題はないでしょう。

確かに戦略という用語は最近ではだれでも使うようになっています。だれでも、戦略という言葉を口にするようになっています。しかし、だからといって戦略的だとはいえないのです。考え方は個人の習慣や癖です。戦略的というのは前述したように方法・プロセスです。ですから知っているかどうかの問題です。知るか、知らないかが前提です。

第2の理由は 後天的に学習した思考パターンが戦略的ではないことです。一般化していいかどうかはわかりませんが、私たちは戦略的には考えないないのです。学習の仕方や教育のあり方、社会にも影響されているかもしれません。この後天的思考パターンが戦略的に考えるようにはなっていないのです。私たちは短期的にモノゴトを考えがちです。これは考える時の癖です。そう考える癖が習慣化しているのです。戦略的にという意味がわかっても考える習慣・癖が優先するのです。

第3の理由は戦略的に考える組織文化がないことです。戦略を明確にしなくても「お互いにやることはわかっている」「戦略を明確にするより柔軟に対応した方がいい」「ややこしいこと考えるより がんばろう」そういう組織文化です・・考え方は簡単には変えられないのです。戦略的と戦略は直結していませんが組織は個人の集合です。戦略的に考えない個人が多ければ戦略的に考えない組織文化が定着します。戦略的に考える必要性が薄いということもあるかもしれません。

ビジネスの成否は確率です。成功確率を上げるために どう考えるべきかです。従来どおりの考え方がいいか、戦略的に考えた方がいいのか これは選択の問題です。考え方も選択の対象です。戦略の一部です。何故なら経営者の思考の仕方がビジネスの成否を決めるからです。ビジネスの成功確率と経営者の思考の仕方には高い相関関係があります。

何故 戦略的でないのか?(1)

何故、私たちは戦略的でないのか? 本当にそうなのか? 戦略的でない? 思考の仕方の問題が?それとも文化の問題なのか、言葉の問題なのか?

「戦略的に」という言葉の後に続くの動詞は「考える」「意思決定する」「活動する」・・。 何故、戦略的でないのか? 何故、戦略的でないといかないのか、何故がわかれば 戦略的に考えられるようになる。

戦略の定義が曖昧なら戦略的という形容動詞も曖昧に使われることになります。戦略的互恵関係だとか戦略的提携なんて用語の使い方もそこに深い意味があるのか、ないのかよくわかりませんが、戦略的といえば なんだか様になるという装飾的な使い方をしているのであれば・・そうであれば戦略に意味求めなくても問題はないのでしょう。

戦略という用語を理解するために国語辞書で調べると: 
1.戦争に勝つための総合的・長期的な計略
2.組織などを運営していくについて、将来を見通しての方策。「経営―の欠陥」「―的人生論」「販売―を立てる」

因みに戦術については:
1.戦いに勝つための個々の具体的な方法 
2.ある目的を達成するための具体的な方法・手段。「賃金闘争の―を練る」「人海―」

戦略という言葉の理解の仕方が人により多少異なるのは仕方がないでしょう。戦争に勝つための戦略というニュアンス・意味合いを好まない人もいるかもしれません。とはいえ辞書に書いてある意味を理解しておくだけでもコミュニケーション上の誤解は最低限 防ぐことはできます。

戦略と戦術という言葉(用語)もしばしば混同して使われがちです。戦略は長期的・総合的、戦術は短期的・部分(局所)的と理解しておきましょう。明確に線を引くのは難しいのですが戦略の方が戦術より上位にあります。上位という意味は総合的・長期的という意味合いもありますが、戦略を活動のレベルに落としたものが戦術です、戦略があっての戦術です

ビジネスの世界で戦略的でないという言い方は 戦略がないということでは必ずしもありません。戦略的でないのはむしろ方法やプロセスの問題です。経営者に戦略を尋ねると「わが社の戦略は・・・・」と確かに戦略はあるのですが・・・ 戦略は飽くまでコンテンツです。間違った戦略であったり 戦略が実行されない場合もあるでしょう。戦略を創り実行するための適切な方法・プロセスが必要なのです。

戦略的に考える、あるいは意思決定するというのは方法やプロセスがありその上で考える、あるいは意思決定することです。合理的な方法・プロセスがある、そのプロセスに基いて考える、つまり、戦略的かどうかは プロセスがあるかどうかの問題です。そのプロセスが適切かどうかです。

何故、私たち(日本の組織)は戦略的ではないのか? その理由はいくつかあると思います、もし競争相手がいなければ戦略的に考える必要はないでしょう。競争相手がいなければ常に勝利できるからです。東京電力はどうでしょう。競争相手はいません。ということは戦略的に考える必要はない?多分。